『マロース』2011

北海道。南部の小さな町。森に覆われたこの一帯の村落で、不審な野鳥の大量死が発見される。それは何人かの住民への感染まで疑われ、渡り鳥の運んで来た鳥インフルエンザと認定される。付近の鶏にもその影響が出て養鶏所は閉鎖され、卵の出荷の出来なくなった養鶏所に自殺者が出る。

五月、その被害は更に拡大し、音別川上流域にある水鳥たちの越冬地ペンケ沼でもカモの死体が二羽確認され、それ以上の拡大を恐れた町は、ペンケ沼一帯に棲息するマガモ、ハクチョウなどを全て一斉に殺してしまう。

そんな五月の珍しい猛吹雪の夜、森の奥にあるコーヒー店・ブナの森に、一人の年老いた遭難者が転がり込む。老人は記憶を全く失ってしまっている。「ブナの森」の女主人・みどりは、この老人を手厚く介抱し、なんとか一命はとりとめるが老人は記憶を取り戻さない。

口さがない喫茶店の常連客たちはこの老人について色々噂するが、心やさしい女主人・みどりは、老人を庇い店に置いてやる。

周囲の町には春がとっくに訪れているというのに不思議なことにこの一帯の村落だけは冬が完全に居坐ったままである。

そんな時、一つの風評が流れる。

鳥たちの死は、インフルエンザ=バードウイルスの為ではなく、全く別の原因によるものではないのか、という風評。

★2011年1月15日(土)~30日(日)